子宮頸がんは、正しく知り、予防と検診を行うことで十分に防ぐことができるがんです。しかし、日本では今も毎年多くの若い女性がかかり、命を落としています。また子宮頸がんワクチンについても、マスコミやSNSでさまざまな報道がされていますが、何が正しい情報かわからない、という声も耳にします。

子宮の部位は、子宮の体部と頸部(入り口)に大きく分けられますが、子宮頸がんは入り口にできるがんのことです。

近年、2000年以降、子宮頸癌の罹患率は若い世代を中心に増加傾向です。死亡率は1990年に低下しましたが、近年は大きな改善が見られていません[1]。昔に比べると、医学も進歩しており、婦人科検診も普及しているにも関わらず、依然として一定数の方が命を落としているということを意味します。また、子宮頸がんは、25歳から44歳までの比較的若い世代に見られるがんで、子育て世代に多いがんなのです。本記事では、子宮頸がんの基本的な概要について取り上げます。

 

病気と診断・治療

 ① 原因 ― ヒトパピローマウイルス(HPV)

子宮頸がんの約95%はヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスの持続感染が原因です[2]。HPVは数多くの型が存在しますが、高リスク型HPV(16型・18型)などが子宮頸がんの原因となりやすいです。HPVそのものはありふれた性交渉により感染しうるウイルスで、性交経験のある女性の約80%が生涯で一度は感染するとされています。多くは自然に排除されますが、感染が継続した場合に、数年かけてがんに進展します。HPVに感染しただけですぐにがんが発症するわけではありません。

② 診断の流れ

子宮頸がんは、主に以下の流れで診断されます。

  1. 子宮頸がん検診(細胞診/HPV検査)
  2. 異常があれば精密検査(コルポスコピー・組織診)
  3. がんと確定診断されたら画像検査(進行期診断)
  4. 進行期に応じて治療方針決定

現在、20歳以上を対象に、細胞診での子宮頸がん検診の推奨間隔は2年に1回が推奨されています。細胞診とは、子宮の入り口をこすって細胞の一部を採取し検査する方法です。細胞診で異常が検出され、必要と判断された場合にはコルポスコピーや組織診(生検)の精密検査を行います。その後の検査にて、経過観察とされた場合でも細胞診の結果によって、推奨される検診間隔は異なります。現在は、従来の細胞診に加えてHPV検査の重要性が高まっていることがガイドラインでも示されており、HPV検査が陰性と診断された場合は、5年に1回のHPV検査が推奨されています[2,3,4]。

精密検査では、子宮頸部を拡大して観察し、異常が疑われる部位の一部を生検します(狙い組織診)。生検の検査で子宮頸がんと診断された場合、確定診断となります。

子宮頸がんが診断された後、MRIやCT(PET/CT)の画像診断にて病変の広がりや転移の有無を検査し、進行期(ステージ)を決定します。この進行期に応じて、治療方法が検討されます。

③ 進行期と治療

治療は進行期によって大きく異なります。

前がん病変や一部の初期の子宮頸がんであれば、子宮の入り口を円錐状に切除する円錐切除術が適応となります。子宮頸部の一部のみの切除ですので、挙児を希望する場合には術後妊娠することも可能です。ただし、子宮の入り口が短くなっていますので、切迫早産などのリスクに注意する必要があります。

Ⅰ期(子宮頸部にがんがとどまっているもの)の場合は、手術で子宮摘出が推奨されます。挙児を希望する場合は、条件を満たせば、子宮頸部のみを切除する、子宮頸部摘出術が施行される場合もあります。Ⅱ期(がんが子宮頸部を超えて広がっているもの)以降では、放射線と抗がん剤を併用する治療法が選択されます。ⅣB期(遠隔転移を認めるもの)では、薬物療法が選択されることがあります。(患者さんの体調や施設ごとの基準により異なる場合があります。)

 

なぜ予防と検診が重要なのか

繰り返しになりますが、子宮頸がんのほとんどは予防できるがんです。

① ワクチンによる一次予防

HPVワクチンにより、子宮頸がんの発症そのもの、子宮頸がんによる死亡を大幅に減少させることが、多くの研究で示されています。

② 検診による二次予防

がんになる前の「前がん病変」の段階で発見できれば、低侵襲な治療法で済む場合もあるため、治療の身体への負担が少なく済みます。また、将来妊娠を希望する人にとっては子宮を残すことができるというメリットがあります。広がり始めたがんの多くは、検診を受けていない方や長期間受診していない方から見つかっていると報告されています。ワクチンと検診の併用により、さらにがんの発症及び死亡の減少が期待できます。

③ 男性への接種

 HPVは、前述したように性交渉が感染経路となり、女性だけでなく男性にも感染するウイルスです。男性の場合にも多くは自然に排除されますが、一部は感染が継続、がんの原因となることや、パートナーへ感染させてしまうことがあります。

 男性では、HPVは、肛門がんや陰茎がんのほか、近年増加傾向にある中咽頭がんとの関連が指摘されています。HPVワクチンは、これらのHPV関連がんの原因となるウイルス感染を予防することを目的としています。また男性が接種することで、パートナーへの感染予防につながります。現在日本では、HPVは女性を対象とした定期接種となっていますが、男性も任意接種として受けることが可能です。欧米をはじめとした各国では、男女ともに定期接種となっていることが多いです。

 

日本の政策の歴史

HPVワクチンは2009年12月に「サーバリックス®︎」が、2011年8月に「ガーダシル®︎」が販売開始され、2010年に厚生労働省がワクチン接種緊急促進事業としてHPVワクチンを追加して助成を開始し、2013年4月1日以降、予防接種法に基づく定期接種となりました。しかしながら、ワクチン接種後に副反応として因果関係を否定できない症状が報告されたことから、同年6月からワクチンの積極的勧奨の“一時的”差し控えとなりました。それ以降は、実質上ほぼ中止の状態(自費での接種は可能)となりましたが、国内外で科学的検証が行われ、ワクチンの有効性と安全性について専門家による評価が重ねられました。これらを踏まえ、2022年4月1日からHPVワクチンは定期接種A類(対象者全員が受けるべき予防接種)として再開されました。

 

諸外国の状況

 2018年5月にWHO事務局長は、子宮頸がんを排除(撲滅)するための行動要請を発表しました[5]。加盟国からの要請を受け、事務局長はCervical Cancer Elimination Initiativeを設立し、子宮頸がんを排除するための世界戦略の策定を進めました。これは、女性10万人あたり4人以下の罹患率とすることです。2020年8月、世界保健総会で子宮頸がん排除のためのグローバル戦略が採択されました[6]。

オーストラリアでは、2007年にHPVワクチン接種が開始され、現在男女ともに公費で接種されており、世界的に最もHPVワクチン導入に成功した国の一つであるとされています。統計上、オーストラリアでは、HPVワクチンとHPV検査による適切なスクリーニングを併用することで、2028年ごろまでには女性10万人あたり4人以下の罹患率、2066年ごろまでには女性10万人あたり1人以下に減少すると考えられており、最も早く子宮頸がんの排除が達成できることが示唆されています[7]。

 米国では、男女ともに11歳から12歳の間のHPVワクチン接種されるべきとされており、9歳から26歳で接種が推奨されています。基本的には接種は無料です。米国全土で男女ともにおよそ60%の人が接種されています。

 英国では、HPVワクチン接種は12歳から13歳の男女に学校保健の枠組みで提供されています。子宮頸がんの罹患率は大幅に減少傾向です。スウェーデンやノルウェーでも、女児の接種率は約80%達成されており、男子も定期接種の適応となっています。

 このように多くの先進国では、男女ともに10代前半で接種が進められており、その成果も見えつつある状況です。

 

[1]  国立がん研究センターがん情報サービス.がん統計.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/ (最終閲覧日:2026年2月8日)

[2]  厚生労働省.ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html (最終閲覧日:2026年2月21日)

[3]  日本婦人科腫瘍学会編.子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.東京:金原出版;2022.

[4]  日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会編.産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023.東京:日本産科婦人科学会;2023.

[5]  World Health Organization. Cervical cancer elimination initiative.
https://www.who.int/initiatives/cervical-cancer-elimination-initiative (accessed February 21, 2026)

[6]  World Health Organization. Global strategy to accelerate the elimination of cervical cancer as a public health problem. Geneva: WHO; 2020.
https://www.who.int/publications/i/item/9789240014107 (accessed February 21, 2026)

[7]  Hall MT, Simms KT, Lew JB, Smith MA, Brotherton JML, Saville M, Frazer IH, Canfell K. The projected timeframe until cervical cancer elimination in Australia: a modelling study. Lancet Public Health. 2019;4(1):e19–e27. doi:10.1016/S2468-2667(18)30183-X.