女性の身体は、年齢とともに女性ホルモンの分泌量が大きく変化し、それに伴って起こりやすい不調や病気も変わります。自分の体質や体調の「いつものパターン」を知っておくことは、つらさを我慢せず病気を悪化させないための第一歩です。

また、月経痛や更年期症状は周囲から見えにくいですし、個人差も大きいため、つらい症状があっても一人で抱え込んでしまいがちです。家族や職場など、身近な人が女性特有の不調を理解することは、お互いを支え合える環境づくりにつながります。

本記事では、主に月経と更年期を中心に、女性のライフステージ別の健康課題と対策、受診の目安を整理します。


女性のライフステージと健康の関連

女性の体調は、月経周期に伴うホルモン変動、思春期〜成人期に多いホルモン分泌の活発さ、更年期以降のホルモン低下が、心身の状態に大きく影響します。

たとえば現代では、妊娠・出産の機会が昔より少ないことなどから、昭和初期に比べて「人生で経験する月経回数」が9〜10倍に増え、月経痛や月経前症候群、子宮内膜症、子宮筋腫などの症状・疾患に向き合う期間が長くなりやすいと指摘されています(資料1)。また、更年期にはホルモン減少に関連してさまざまな不調が起こりやすく、さらに閉経後は生活習慣病や骨粗しょう症など、年齢とともに増える健康課題が前面に出てきます(資料1)。

大切なのは、

  1. 自分の「体調のリズム」を記録して変化に気づく
  2. 婦人科疾患に関する知識を持っておき、セルフケアを心がける
  3. 治療が必要な不調は早めに産婦人科へ相談する

の3点だと言えるでしょう。


思春期(おおむね10代)

■起こりやすいこと・注意点

  • 初経(はじめての月経)から数年は月経周期が不安定なことが多く、出血量や痛みの程度もばらつきやすい
  • 月経痛(下腹部痛、腰痛、吐き気など)や、月経前の心身の不調が出やすい時期
  • 10代でも、重い月経痛(月経困難症と呼びます)や月経前の心身の不調(月経前症候群の可能性があります)、多すぎる経血量(過多月経と呼びます)などは治療の対象となる

登校や学業、部活動などに支障をきたすほどの重い月経痛は、月経困難症という診断がつく状態だと産婦人科医は考えます。これは治療が必要な状態であり、鎮痛薬のみで対処するよりホルモン剤(低用量ピルなど)で治療した方が良い場合も多いです。

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は、月経前にこころとからだの不調が続き、月経開始とともに軽快する状態です。症状は3〜10日ほど続くことが多く、特に思春期の女性で多いと考えられています。なお、日本人女性の70~80%が月経前に何らかの不調を自覚し、5%は重い月経前症候群で日常生活に困難を感じています(資料2)。治療には漢方薬やホルモン剤(低用量ピルなど)などが用いられます。

■健康管理のポイント

  • 「いつ、どんな症状が、どれくらい続くか」をメモやアプリで記録する(痛み、気分、睡眠、出血量など)
  • 痛み止め(市販薬を含む)を使う場合は、用法・用量を守り、痛みが強くなる前に服用すると効果的
  • 症状によって学校生活に支障が出ている場合は婦人科への相談が推奨される
  • 急な体重変化や極端なダイエットは、無月経や貧血、骨の健康に影響するため要注意

月経は「恥ずかしいもの」ではなく、身体の健康のサインです。困ったら保護者や保健室の先生などに相談できる関係性を作っておくことがとても重要です。大人が「学生のうちに産婦人科へ行くなんて恥ずかしいからダメ」と考えてしまうのは、本人のつらさを増強させ、適切な治療を遠ざけるになってしまいかねません。

■受診の目安

  • 痛みで学校を休む、毎回寝込む、鎮痛薬が効きにくい
  • 出血が非常に多い/長く続く、立ちくらみが強い
  • 月経が極端に不規則、3ヶ月以上来ない(妊娠の可能性がない場合も含む)

こうしたときは、月経困難症や子宮内膜症など、治療で改善できる原因が隠れていることがあります。我慢しすぎず、どうか早めに婦人科を受診してくださいね。


成人期(おおむね20〜40代)

■起こりやすいこと・注意点

  • 月経痛や月経前症候群が続く、あるいは悪化する
  • 子宮内膜症、子宮筋腫などが原因で、痛み・過多月経・貧血が起こる
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovary Syndrome)などにより、月経不順が続く(妊娠しにくさにつながっていることもある)

成人期は、仕事や家事・育児、介護などで心身への負荷が増えやすく、睡眠不足やストレスが月経関連症状を強めることもあります。なお、月経前症候群は「気分の問題」ではなく、体のリズムの中で起こる「症状」です(資料2)。周囲が「性格や怠け」などと決めつけず、予定の調整や休息の確保に協力できると、本人の負担が大きく減るはずです。

また、片頭痛や肌荒れ、便通の変化など、月経周期と連動して起こる不調もあります。自分の月経周期と症状の関係が見えてくると、予定の立て方や対処がしやすくなるでしょう。

■健康管理のポイント

  • 月経や体調の記録を続け、変化(痛みの悪化、出血量の増加、周期の乱れ)を見逃さない
  • 貧血を疑う症状(息切れ、動悸、だるさ、集中力低下)があれば早めの受診を(血液検査や婦人科での超音波検査など)
  • 避妊や性感染症予防、子宮頸がん検診など、予防医療を大切に

月経関連症状の治療には、生活習慣の工夫・調整に加えて、鎮痛薬の使い方の工夫やホルモン製剤(低用量ピルなど)、漢方薬など、個々の症状や背景に応じた選択肢があります。自己判断でずっと我慢するより、早めに婦人科で相談すると負担が軽くなることが少なくありません。

■受診の目安

  • 月経に伴う痛みや出血で生活に支障がある
  • 市販薬で対処しても改善しない、年々悪化する
  • 性交痛、排便痛など月経以外の痛みがある
  • 貧血が疑われる、あるいは検査で指摘された

早期に治療することで、痛みの軽減だけでなく、将来の健康維持にもつながります。また、例えば子宮内膜症(ひどい月経痛や、月経痛の悪化の原因になり得る婦人科疾患)は、放っておくと不妊症を引き起こすことがあります。性感染症の1つであるクラミジアも、無症状なことが多いにもかかわらず将来の不妊症の原因になることがあります。

なお、近年では低用量ピルにもさまざまな種類があるので体質に合う薬を見つけやすいですし、超低用量ピルという副作用が少ない薬もあります。また、休薬期間を設けずに数ヶ月間ピルを飲み続ける「連続投与」という方法で月経回数を年に数回まで減らすことも可能です。

こうしたことを知っておき、早めに治療することで人生の選択肢が変わることもありますから、ぜひ産婦人科を味方にしていただければと思います。


更年期から閉経以後(おおむね40代後半〜)

閉経とは、最後の月経から12ヶ月連続で月経がない状態(ほかに明らかな原因がない場合)を指し、その前後の移行期を更年期(周閉経期)と呼びます(資料3)。

この時期は、女性ホルモン分泌量の揺らぎと低下により、ほてり・発汗(ホットフラッシュ)、動悸、肩こり、睡眠の質の低下、気分の落ち込みなどさまざまな症状が起こり得ます。世界保健機関(WHO)も、閉経移行期の症状は人によって大きく異なり、日常生活や生活の質に影響し得ると説明しています(資料3)。

月経が不規則になる時期は、体調の波が読みにくくなるだけでなく、「更年期だから仕方ない」と別の病気のサインを見逃してしまいやすいとも言えます。強い抑うつ、不正出血、急な体重減少などがある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

■起こりやすいこと・注意点

  • 骨粗しょう症:骨量が減りやすく、転倒による骨折で寝たきりにつながる危険性がある
  • 脂質異常症や高血圧、糖尿病など:閉経以後は年齢とともに発症リスクが高まる
  • 腟の乾燥や性交痛、繰り返す膀胱炎など:婦人科で治療可能なものも多い

更年期症状は「年のせい」と我慢されがちですが、生活習慣の調整や薬物療法など、つらさを軽くする方法があります。心身の不調が続くときは、婦人科やかかりつけ医にご相談くださいね。

■健康管理のポイント

  • 「更年期のゆらぎ」を前提に、まずは見える化する(症状の種類や程度をメモ)
  • 骨の健康を意識する(適度な運動、カルシウムやビタミンD摂取)
  • 心血管・代謝(血圧、脂質、血糖)を定期的にチェックする
  • 腟や尿の不調は「年齢のせい」で片づけない

更年期症状のうち、生活に支障が出る場合は「更年期障害」とされ、治療で改善が見込めます。主な治療として、ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)、漢方薬、症状に応じた薬(睡眠・気分不調への治療など)があります。ホルモン補充療法は特にほてり・発汗などに有効ですが幅広い症状の改善が期待できますので、ぜひ産婦人科で相談してみてください。

■受診の目安

  • ほてり・発汗・動悸、不眠、気分の落ち込みなどが続き、日常生活や仕事に支障が出ている
  • 「更年期っぽい」と思う不調が続き、他の病気が隠れていないか不安
  • 腟の乾燥・性交痛、尿もれや頻尿などがつらい・繰り返す

以上を参考に、受診を検討いただければと思います。

また、周囲(家族・職場)ができることとして、

  • 体調に波があることを理解し、予定や役割を柔軟に調整する
  • 「気の持ちよう」などと言わず、症状を言語化できる雰囲気をつくる
  • 早めの受診や定期的な健診を後押しする

更年期は、働き方や家庭の状況が変わりやすい時期でもあります。まだまだ長く続く人生を楽しむためにも、「健康第一」について改めて考えていただければ嬉しく思います。


まとめ

本記事では、女性はライフステージによって健康課題が移り変わっていきやすいこと、そしてそれらへの対処を噛み砕いて解説いたしました。

思春期では、月経の始まりと心身への影響を踏まえて適切に産婦人科を活用いただきたいです。つらい症状を軽減するためには、保護者や学校の理解も大切です。また、特に「痩せすぎ」による長期的な健康への悪影響を軽視すべきではありません。

成人期は、月経トラブルや婦人科疾患が目立ちやすくなり、仕事などとの両立をうまく図っていくことが重要です。子宮内膜症やクラミジア感染など将来の不妊症につながってしまう疾患もありますので、正しい知識と早めの治療が肝要です。

更年期以降は、女性ホルモン低下に伴う不調と慢性疾患の予防が重要になります。「生活に支障が出ている更年期の症状」は治療対象と考えていただきたいですし、平均寿命を考えると閉経以降も人生は30年ほど続くことになります。健康寿命を伸ばすため、セルフケアと適切な受診・健診をどうぞお忘れなく。


参考資料

  1. 働く女性の心とからだの応援サイト. 女性ホルモンとライフステージ
  2. 日本産科婦人科学会. 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
  3. World Health Organization. Menopause